デザイナー座談会

サービスに向き合うことで、ものづくりは成長していく
───はてなで働くデザイナーの仕事について

はてなのデザイナーは、「はてなブログ」「はてなブックマーク」などの自社サービスだけでなく、出版社向けマンガビューワ「GigaViewer」を搭載したWebマンガサイト・マンガアプリ、ゲーム連動サービスなど、さまざまなプロジェクトのデザインを担当します。今回は、サービス開発についてや、デザイングループ、リモートワークでの働き方について、チーフデザイナーのid:tanemu、id:akawakami、デザイナーのid:pos-san、id:n-sugaの4人に話を聞きました。

デザイナーの成長と技術の展開を担当する「デザイングループ」

まず、はてなのデザイナーの皆さんが所属する「デザイングループ」について説明していただけますか。

id:tanemu

はてなの開発者は、プロダクトごとに縦軸に分かれた「開発チーム」と、職能ごとの横軸の組織である「グループ」の両方に所属します。

デザイナーは、開発チームでエンジニアやディレクターと一緒にサービス開発に関わりますが、デザイングループという横串の組織にも所属するという重層的な構造です。

私とakawakamiさんの2名がデザイングループのチーフデザイナーを担当していて、グループ全体の方針決定やデザイン品質の向上、デザイナーのマネジメントや成長支援、採用などを行っています。

おふたりともデザイングループのチーフデザイナーをしながら、デザイナーとしてもサービス開発に携わってらっしゃると聞いています。皆さんの担当サービスについて教えてください。

id:tanemu

チーフデザイナーのほかに、マンガサービスを出版社さんと開発するチームに所属して、全体のアートディレクションを担当しています。アートディレクションとデザインの両方に関わるケースもあります。集英社さんのマンガサービス「少年ジャンプ+」(Web版)や、最近ですと、講談社さんのアフタヌーン編集部のWebマンガサイト「&Sofa」、オーバーラップ・プラスさんのマンガアプリ「コミックガルド+」などは、アートディレクションとデザインを担当しました。

id:akawakami

開発チームとしてはプロダクトと組織の両軸から基盤開発に取り組むプラットフォームチームに所属しています。はてなのポータルサイトや「はてなスター」など、自社サービスの基盤部分が担当の領域です。

他にも、コーポレートロゴやコーポレートサイトなど、採用やインターンシップなど、会社のブランディングに関わるコンテンツやサイトのデザインも行っています。

id:pos-san

私は2020年に入社し、現在は「はてなブックマーク」を担当しています。主に、サービスのグロースに関わるUIの改修などを行っています。直近ですと「はてなブックマーク」の「1stブックマーク通知」も担当しました。

id:n-suga

2018年に入社してから、マンガチームでアプリ開発をを担当してきました。tanemuさんやほかのデザイナーと一緒に「コミックガルド+」や「コミックDAYS」といったマンガアプリのデザインをしています。

pos-sanさんとn-sugaさんはそれぞれ2~4年前にご入社されましたが、はてなのどんなところに興味を持ったのでしょうか。

id:pos-san

自社サービスを開発する一方で、小説やマンガサービスのように他の企業さんとの共同開発を展開していることを知り、さまざまなプロダクトに関わることができそうな点に魅力を感じました。もともとは、前職の同僚が毎年はてながやっているサマーインターンに参加した際に、とても面白い会社だと感じたという話をしてくれたことで興味を持ったんです。その後、同じ会社の先輩がはてなに転職をして、はてなについてのお話を聞くうちに、自分も働いてみたいと感じるようになりました。

id:n-suga

制作会社で働いていたときから、デザイナーとして自分が作ったものを直接お客様やユーザーさんに届けられることにやりがいを感じていました。転職を考えた際、実際に手に取ることができるものでもWebサービスのようなデジタルのものでもよいので、優れたプロダクトを持っている会社で働きたいという思いがあったんです。はてなには良いプロダクトがあるだけでなく、それをスタッフの皆さんがとても大事にしている点に魅力を感じました。

仕事がダイナミックに変化する中で、志を持って開発に向き合える

チーフのおふたりから見て、はてなのデザイナー職にはどのようなおもしろさがあると思いますか。

id:tanemu

入社した2012年頃、はてなは自社で提供する個人向けサービスの開発がメインでしたが、その後、マンガや小説など共同開発のプロジェクトやBtoBのサービスも増えて、私自身もさまざまなサービスに関わることができました。グラフィックデザインの会社からWebサービスがやりたくてはてなに入りましたが、その後マンガサービスをつくるようになるとは想像していなかった。そうしたダイナミックな変化があることは、デザイナーとしてとても面白いと感じます。

あとは、サービス開発にとても純粋に向き合えることでしょうか。インターネットが大好きで、いいサービスを作りたいという気持ちをみんなが持っています。例えばマンガサービスであれば、書店の数や紙媒体のマンガ雑誌に勢いがなくなっていくなかで、私たち自身も大好きで思い入れのあるマンガという文化をどう守っていくべきなのかということを真剣に考えて、Webやアプリのマンガサービスにコミットしています。

そうした志を大切に、気持ちのいい状態で仕事に向き合えることは、デザイナーやものづくりに関わる人にとっては魅力だと思います。

その環境は、自社サービスではなく共同開発であっても同じだと感じています。「受託」ではなく「共同開発」という呼び名の通りの印象です。

同じチームのn-sugaさんから見て、いかがですか?

id:n-suga

サービス開発に純粋に向き合えるといった感覚は、私も常に感じています。共同開発であっても、パートナーであるクライアントさんと我々チームメンバーが一緒にいいプロダクトを作るために真摯に向き合っているという雰囲気があって、それが好きです。

時にはクライアントさんから難易度の高いご要望だったり、厳しいフィードバックをいただくこともありますが、それもいいプロダクトにするためのプロセスですし、ユーザーさんに喜んでいただけるように、問題を解決したり改善したりする方法をみんなで一緒に考えていける点にやりがいを感じています。

id:akawakami

いろいろなプロダクトに携われる点は、私自身も魅力に感じています。

それに加えて、はてなでは、UIやビジュアルのデザインに関わることはもちろん、サービスの企画やコーディングまで、デザイナーが担える役割は幅広く、様々なシーンで活躍することが出来ます。

さまざまなプロダクト、そしてさまざまな役割で、デザイナーとして専門性を発揮しながらも、その職域に囚われることなく、ひとりのサービス開発者として、とことんサービス開発に向き合うことが出来る。はてなのデザイナー職にはそういう面白さがあると思います。

一つのプロダクトを磨き続ける中で、サービスのあり方を考え続けた

皆さんがこれまでのプロジェクトで最も印象に残っていて、その経験が成長につながっていると感じているものを教えてください。

id:n-suga

それまでWebマンガサイト向けのビューワとして提供していた「GigaViewer」のアプリ版である「GigaViewer for Apps」の立ち上げに最初から関われたことは、楽しくやりがいがありました。

前職でもスマートフォンアプリのデザインはやったことがあるのですが、こんなにしっかりと関わるのは初めてのことでした。tanemuさんにもプロジェクトを通じていろいろと教えていただくことができたので、アプリのデザインについてはなんとなくつかめたかなという気がしています。

id:tanemu

なんとなくではなくてちゃんとつかめていると思いますよ(笑)

会社として「GigaViewer」ができてさまざまなマンガサービスの開発に携わることになったというのが大きな節目だったと思いますが、僕が個人的に思い出深いのは、任天堂さんの「スプラトゥーン」のゲーム関連サービスである「イカリング2」のプロジェクトですね。

もともと「スプラトゥーン」の大ファンで、ゲームもやりこんでいました。いいものを作らなくてはと、とにかく頑張りましたね。大人気のゲームなので、もちろんプレッシャーはありました。ちょっとでも失敗したら、全世界のユーザーさんから怒られるんじゃないかと思いながらやっていたのを覚えています。自分が好きすぎるものをデザインするというのは、なかなか大変ですね。

id:akawakami

私は入社後5~6年ほど「はてなブックマーク」を担当していたのですが、在籍期間中にWeb版とアプリ版の両方のリニューアルに立ち会いました。その過程を通して、サービスの使われ方や、これからのサービスのあり方に深く向き合えたのがいい経験になりましたね。

はてなに入社するまではグラフィックデザイナーをしていたので、長期にわたってひとつのWebサービスを磨き続けるという経験をしたことがなかったんです。「はてなブックマーク」の開発を通じて、新しいアイデアを世に提示し、それに対してユーザーさんからフィードバックをもらい、サービスをより良いものに変えていく。その繰り返しの中で、Webサービスのデザイナーとしての自分のあり方が確立されたように思います。

id:pos-san

「はてなブログ」のデザインを担当していたときに、サービスのトップページに新設する「トピック面」を作る企画に対して、初期から関わることがありました。

「はてなブログ」は前身の「はてなダイアリー」を含めると、はてなの中では歴史のあるサービスのひとつです。そのサービスのトップを触るわけですから責任も重大でした。どんなトピックを配置するかなどを、ユーザーさんのニーズを探って、さまざまな方向から分析しながら確定していく。ユーザーさんのことを考えながら進める作業が貴重な経験になりました。

いまのお話のように「はてなに入ってから身についた」と感じるスキルにはどんなものがありますか。

id:n-suga

情報設計全体の考え方は、入社してずいぶん鍛えられたなと感じています。グラフィックデザインは、1枚の紙やページの中にどう情報を収めるかが重要なので、今まではその感覚でやってきていました。

でも、アプリのデザインでは立体的な考え方をしなければいけない。1枚にまとめるという発想からしばらくの間は抜けきれなかったんですが、最近ようやく全体をデザインする考え方ができるようになってきたと思います。

id:pos-san

私もn-sugaさんと同じく、はてなに来てから、単なる外見の良し悪しではなく、全体の設計や一歩踏み込んだデザインについて考えるようになりました。デザインの対象とするもの、ユーザーさんの行動そのものをよく観察するようになりました。

本質やユーザーさんの思い、ニーズを見極めていく力が、少しずつですが自分にも付きつつあると思っています。

リモートワークでの開発やコミュニケーション

はてなは在宅/出社を自由に選べるフレキシブルワークスタイル制度を導入しており、ほとんどのスタッフが在宅勤務を実施していると聞いています。リモートワークになってからの開発やコミュニケーションについて教えてください。

id:n-suga

マンガアプリチームでは、毎日オンラインで昼会や振り返りのMTGを開いてコミュニケーションをしています。デザインのことや実装などで相談にのってほしいときはSlackで声をかけて、ハドルミーティングをすることが多いです。

はてなは京都と東京の2拠点制ですが、リモートワークになる以前は、マンガアプリチームのエンジニアは皆さん京都で、私だけが東京から遠隔でテレビ会議などに参加している状態だったんです。リモートワークになってからは、みんなそれぞれの場所で仕事をするようになったので、関係がよりフラットになって、むしろ距離感が縮まったかもしれません。

id:pos-san

私ははてなに入社して数か月で全社的な在宅勤務が始まった状態だったので、チームメンバーの中には、リアルで会ったことがない人も多いんです。ただ、リモートワークのなかでも、それぞれの様子や人となりがわかるような雑談の場も用意されたりしていて、皆さんともカジュアルにコミュニケーションできています。

id:tanemu

もともと2拠点制だったことで、遠隔のやり取りには慣れているメンバーが多かったですし、テキスト文化も根付いています。ただオフラインで会話する機会は圧倒的に減っていますので、テキストコミュニケーションの量も増えました。テキストにせよオンラインのMTGにせよ、デザインに関するスキル的な部分や、普段の仕事で見えづらいところを、できるだけ細かく会話するようにはなりました。デザイングループとしても、そういう場が定期的にあることで、チームの一体感みたいなものは作れているような気がします。

id:akawakami

別チームのデザイナーと話す機会をつくるために、オンラインでもデザイングループのみんなが一堂に会する場は意識的に設けるように心がけています。

例えば、定期開催している「デザインゼミ」。シニアデザイナーが自分の知見や経験を披露したり、日常のちょっとした工夫などをみんなで話せる会なのですが、入社して間もないデザイナーが、他のチームのデザイナーのことを知ったり、交流を深めたりする、良い機会になっているようです。

同じ志を共有できる仲間との出会いを楽しみに

pos-sanさんとn-sugaさんは、今後どのようなチャレンジをしていきたいと考えてらっしゃるのか教えてください。

id:n-suga

「コミックガルド+」を皮切りに「GigaViewer for Apps」が起ち上がったので、これからはWebマンガサイトだけでなくマンガアプリでもさまざまなサービスにお使いいただけるように機能開発していきたいです。自分が最初から携わったプロダクトですから、それを育てていくことを当面の目標にしたいと思います。

id:pos-san

デザイナーとして、やはりより良いものを作っていくということに尽きますね。私が関わるはてなの自社サービスである「はてなブックマーク」や「はてなブログ」の主役は、ユーザーさんが作ったり共有してくださるコンテンツです。デザインやUIはその主役を引き立てるためにあるので、ユーザーが快適に利用できるUI、そのコンテンツにフォーカスを与えるデザインを考えていきたいですね。ユーザーさんがコンテンツを作る上で摩擦になっている部分を見つけながら、それをより良いものにできるデザイナーになりたいと思っています。

デザイングループとしての今後はいかがでしょうか。

id:akawakami

はてなは、自社サービスを起点としながら、現在では、共同開発・協業案件、サーバー監視、オウンドメディア支援など、さまざまなプロジェクトを手掛けています。取り扱うテーマはプロジェクトによって異なりますが、その根底には、ものづくりに真摯に向き合うカルチャーがあるように感じています。

デザインにおいても、ものづくりにこだわりを持ち、プロダクトの魅力をより良いものに出来るよう、努めて行きたいです。デザイングループとしても、そういったデザイナーの取り組みを後押しできるような環境づくりを進めていきます。

インターネットを通じて、人々の生活をより良いものにしたい。そんな志を共有できる仲間とともに、ものづくりを楽しむことが出来る機会が、これからもたくさん訪れるといいなと思っています。